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2014年3月30日 (日)

「つぶてソングの集い」inみやぎ

3月28日に宮城県の名取市文化会館で開催された「つぶてソングの集い」に司会で参加してきました。今年で4回目のこのコンサートは、2011年3月11日の東日本大震災の直後から、混乱と絶望の中で福島在住の詩人・和合亮一さんがツイッターで発信した「詩の礫(つぶて)」に心を動かされた作曲家の新実徳英さんが作曲したのが全12曲の「つぶてソング」。

その「つぶてソング」をさまざまな合唱団や会場のお客様と歌うのがこのコンサートです。
2011年に杉並で開催され、その後郡山、南相馬とつづき今年は宮城県の名取市。ここも大震災の津波の甚大な被災地で800名近くの方が命を失った場所です。

詩を書いた和合さんは高校の国語の先生です。
あの大震災や原発事故から3年。いまだ14万人の人が避難生活を余儀なくされています。その一方で「風化」も語られることが多くなってきました。

『福島はまだ「有事」のなかにあります。私たちは沈黙せざるを得ないことに苦しんでいます。こころのなかに「どこにもぶつけようのないもの」がある。それなのに風化は進む。ことばにならないものと向き合うことが、ますます難しくなっています。
(略)こころの奥底にあるものを表に出すにはどうしたらいいでしょう。ぼくは、例えば詩や音楽を通じてできるのではと考えています。福島市で今年1月、詩を大勢で読む群読や合唱の公演がありました。舞台に立ったのは地元の人ら150人。ぼくの<放射能が降っています/静かな夜です>といった詩は合唱曲になりました。曲が出来た直後、つらくて歌えないという方がいらっしゃいました。でも当日は、みんなで歌ったんです。ことばや歌に、時間の重みによって抑え込んでいたものがこもり、あふれ出てきたようでした。
福島の人は、誰でもトラウマ的なものを持っているんじゃないでしょうか。ただ、こころのなかに引かれた「線」を越えて、一歩進みたい方がいると思うんですよ。そのきっかけは、形にならないままの思いをことばにしようとすることなのかもしれません。だから、そのことばを何とかすくい取って、耳を傾ける文化が必要なのです』
 2014・3・6 朝日新聞より

そんな和合さんが書いた「詩の礫(つぶて)」に即座に反応したのが新実さんでした。
「僕は和合さんにお願いして『現代詩手帖』(2011年5月号)に入稿した直後のゲラをいただいて、それを見せていただいて。歌にできるに違いないという、何か予感があったんです。
その予感以前に、震災に直接関わる何かをできないかなと。作曲家なんて無力なものですから、何ができるかわからないけれどという姿勢でいたところ、≪詩の礫≫というのがあるのを知ったので、これは書かなきゃいけない、書いて、とにかくみんなで一緒に歌いたいなと思ったんですね。
それで、3曲づつつくりました。これは4回やったので、合わせて12曲になったんですけれど、とにかく早く人々に『こういう曲をつくったよ』ということを知らせられるのはユーチューブしかないと思ったんですね。それで、名田綾子さん、浜中康子さんに伴奏をお願いして、自分で歌ってしまえということで始めたのが、この<つぶてソング>です」

新実さんが作曲直後に「あなたはどこに」を歌ったユーチューブはこちら
http://www.youtube.com/watch?v=ZWJ_wTIdPPI 

3月28日の「つぶてソングの集い」には地元の名取混声合唱団のみなさんや仙台三桜高校の音楽部による女声合唱、宮城教育大学と東北大学の合同による混声合唱団、NHK仙台少年少女合唱隊、ウインドアンサンブルやテノールの佐藤淳一さん、浜中康子さんと鷹羽弘晃さんのピアノ伴奏で「つぶてソング」の中から「あなたはどこに」「夢があるのなら」「フルサト」「重なり合う手と手」「失うことは悲しい」「燃えあがろう」「なぜ生きる」「涙が泣いている」が歌われました。

同じ曲でも女声合唱と混声合唱ではまったく違った魅力が生まれてくる。
少年少女音楽隊の合唱には、大人にはない音楽の力があってビックリ!
「涙が泣いている」では、まず和合さんが詩を朗読して、次に新実さんの「歌」を演奏したのですが、詩と音楽のそれぞれの持っている力をあらためて実感しました。

コンサートの最後に出演者も客席もいっしょになって「あなたはどこに」を歌いました。
なんともいえない心のつながりを感じるエンディング。
静かで確実な感動。
震災以来、色々な場所で「音楽の力」という言葉を使いましたけれど、この会場では本当にその素晴らしさを実感。
このプロジェクトの代表でもある浜中康子さんは、こう言っています。

「記憶から消し去りたいほど辛く悲しい大惨事を、一方で『風化させないでほしい』と訴え続けなければならない被災地の人々の切ない心の内を知る時、自らの生き方を問われている思いがします」

まさにそのとおり。
音楽で何をなすべきか…音楽にかかわる仕事をする一人ととして、これからも常に考えなくてはならない問いです。

当日、コンサートの締めくくりに出演者と会場が全員で歌った「あなたはどこに」をあらためて紹介します。

「あなたはどこに」 詩:和合亮一 曲:新実徳英

あなたはどこにいますか
あなたの心は 風にふかれていますか
あなたの心は こわれていませんか
あなたの心は 行き場を失っていませんか

いのちをかけるということ
私たちの故郷に
いのちをかけるということ
あなたのいのちも わたしのいのちも
決して奪われるためにあるのではないということ

あなたはどこにいますか
あなたの心は 風にふかれていますか
あなたの心は こわれていませんか
あなたの心は 行き場を失っていませんか

詩を読んで、音楽を聴いて、そして、歌ってみませんか。

新実徳英さん指揮の合唱による「あなたはどこに」はコチラ
⇒ http://www.youtube.com/watch?v=JyNAWvUCf0A


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コメント

素敵なレポートをありがとうございます。浜中さんも歓んでいます。
朝岡さんの中であの集いがどのようなものであったかを知ってほんとうに嬉しく思いました。可能ならば次回もその次も、またその次も…なんて思ったりしています。

投稿: 新実徳英 | 2014年4月 2日 (水) 09時25分

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