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2014年5月

2014年5月27日 (火)

METライブビューイング「コジ・ファン・トゥッテ」

気がつけば、だんだんシーズンも残り少なくなってきました。今シーズンの日本のポスターの表紙にもなっている「コジ・ファン・トゥッテ」を見てきました。

METライブビューイング2013~2014
2014年4月26日上演
モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」

 

指揮:ジェイムズ・レヴァイン
演出:レスリー・ケーニヒ

 

フィオルディリージ:スザンナ・フィリップス
ドラベッラ:イザベル・レイナード
フェルランド:マシュー・ポレンザーニ
グリエルモ:ロディオン・ポゾコフ
デスピーナ:ダニエル・ドゥ・ニース
ドン・アルフォンソ:マウリツィオ・ムラーロ

 

メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団

METの芸術監督であるJ・レヴァインが今シーズンから復帰。ピットに姿を現すと、温かく熱い拍手が沸き起こり「我らがレヴァイン!お帰りなさい」といった空気にあふれていました。
2年に渡る休養中は再起を危ぶむ声も聞こえましたが、車いすに乗っての指揮ながら活力と精気みなぎる音楽は健在でした。
序曲の時などレヴァインの顔のアップがたくさん入って、今回の上演が「レヴァイン復活祭」みたいな感じです。特に「コジ・ファン・トゥッテ」は彼が最も愛する作品とのことで、キャストもMETの看板がズラリ。

姉妹を歌うS・フィリップスもI・レナードもアメリカ出身でジュリアード卒。看板テノールのポレンザーニにロシア人ながらMETで13年近くキャリアを積んでいるポゾコフ。18歳の時からMETのヤングアーティストプログラムに参加してレヴァインの薫陶を受けているD・ニース。公演だけでなく「育てる」劇場としてのMETが生んだ花のある歌手が勢ぞろいですね。
フィオルディリージを歌うフィリップスと妹のドラベッラのレナードは風貌はどうしても姉と妹が逆じゃないかと思いましたが(笑)、まぁ良しとしましょう。
レナードの品格ある美しさは格別で、聴き惚れ、見惚れてしまった。大人の夢空間「オペラ」にはこういう歌手がいないとね。フィリップスは歌は確かに上手ですが、個人的好みから言うともうちょっと成熟した声になって歌うフィオルディリージが聴いてみたいです。
D・ニースは顔や身体がずいぶんと引き締まった感じになりまして、相変わらず演技も上手い。存在感あるデスピーナでした。ホントにこの人女優だわね。ライブビューイングに最適と言うか、アップで映る表情の実に豊かなこと!魅せてくれます。

アンサンブル・オペラの本作品ですがレヴァインの手にかかると、本当にそのアンサンブルも最高。1幕の長いフィナーレなど片時も間延びせず、各歌手の持ち味を最大に生かしながら絶妙なるモーツァルトの響き!幸せだなぁ…。

96年初演のレスリー・ケーニヒの演出はオーソドックス路線で、本作を見なれた人には物足りないかもしれませんが、場面転換がスピーディで音楽の流れを止めたり壊さないから、その部分は素晴らしいです。
読み替えや問題提起がない分、終演後にあの2組のカップルはこれからどうなるのか?…と真面目に考えさせられてしまい、まぁこのあたりが「コジ~」の毎回楽しいところです。

人を好きになる心のベクトルが思い通りにいかなくなるのは「女はみんなこうしたもの」だけでなく、男だって一緒。そのテーマは永遠なのです。
亡くなった渡辺淳一さんが書いてましたが、愛において人間は全然進歩していない。愛は親から子にも引き継げない。一代限りの代物。
このオペラは、まさに人間にとって人を好きになることのテーマを問いかけてくれる傑作だと思ってます。

さてMETライブビューイングも、来週はいよいよロッシーニの「チェネレントラ」。
フローレス&ディドナートの共演。
私、それを見てからザルツブルクの聖霊降臨音楽祭に行って、実際にフローレスやディドナート聴くんですから、もうワクワクです。

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2014年5月25日 (日)

新国立劇場「カヴァレリア~」&「道化師」

 

久しぶりに新国立劇場へ出かけました。指揮者・オケ・演出・歌手。この4つがそろって完成する感激を味わいました。

新国立劇場公演
マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」&レオンカヴァッロ「道化師」

 

指揮:レナート・パルンボ
演出:ジルベール・デフロ

 

新国立劇場合唱団 TOKYO FM少年合唱団
東京フィルハーモニー交響楽団

 

<カヴァレリア・ルスティカーナ>
サントゥッツァ:ルクレシア・ガルシア
ローラ:谷口睦美
トゥリドゥ:ヴァルテル・フラッカーロ
アルフィオ:成田博之
ルチア:森山京子

 

<道化師>
カニオ:グスターヴォ・ポルタ
ネッダ:ラケーレ・スターニシ
トニオ:ヴィットリオ・ヴィテッリ
ペッペ:吉田浩之
シルヴィオ:与那城敬

いわゆるヴェリズモ(真実主義)・オペラの代表作。社会人を生徒としたオペラ講座でこの公演を採りあげて、実際に観に行くこともあって、事前に舞台を見に行きました。
フランドル出身のデフロが新国立劇場に初登場で新演出というのも興味のわくところでした。

まずは「カヴァレリア・ルスティカーナ」。幕が開くと、そこはシチリアの村の古代ローマ円形劇場の遺跡です。丘に囲まれているのでしょう。市も手には大きなオリーブの老木が1本生えていてルチアの営む居酒屋の入り口になっている。
このオペラは復活祭の日が舞台なので、磔刑の十字架やキリスト像、マリア像が村人によって担がれてる場面も登場し、なかなか見ごたえがありました。ただし建物や教会はありません。デフロは古代アレーナを舞台にすることで「観客を舞台上に映す鏡」と意図したと語っています。古代ローマ時代にはアレーナで人間同士の剣による闘技、あるいは人間対動物の闘技(どちらにしろ命が生贄として捧げられるイベントでしょうね)が行われていて、デフロによればこのオペラのアレーナでの生贄的存在がトゥリッドゥであり、ネッダというわけです。

ほんとうに古代アレーナで芝居を見ている気分になる演出でした。「道化師」では冒頭に旅回りの一座が客席から芝居のビラまきしながら登場する仕掛けもあって、そのあたりの雰囲気作りは面白かったです。

デフロは最近流行の「読み替え」演出とは一線を画す演出家です。
「ヴェリズモのオペラは特に演劇と音楽の融合が重要です。ベルカント・オペラのように静止した舞台で歌の芸術を聴く、というタイプの作品とは演出方法も違います。演技は音楽的で、音楽は演劇的でなくてはならない。そこに演劇上の一致が生まれる。それが≪芸術≫です。(中略) 演出家は作品が作られた状況をふまえ、解決案を編み出さなければならない。現代に物語を移すのも殆どの場合は無理がある。だから演出の仕事というのは複雑なのです。作品が上演されるのは現代です。しかしこれらの作品が書かれたのは今ではないのです。私は現代のテクノロジーは利用するべきだと思っています。だが物語を破壊するのはいけない。真の作者は作曲家なのです。
私たちは再現芸術をする立場です。音楽を殺してはいけません」
(公演プログラムより)

単なる懐古趣味ではなく、作品に対する深い洞察と背景の分析を身上とするタイプですね。

指揮のパルンボはヴェリズモ・オペラの傑作を、まさに演劇的音楽に仕上げていました。
舞台上の歌手の動きとオーケストラの音楽が、動的にも感情的にもピッタリ重なって展開してゆきます。もちろん感情的に高ぶる部分や聴かせどころの盛り上げもツボを心得ていて、しかもそれが本当に自然な形なので気持ち良い。オケに感動というというよりオペラ全体に心から感激できる音楽でした。

歌手ではトゥリッドゥのフラッカーロとカニオのポルタの両テノールが聴かせてくれました。
嫉妬と復讐がテーマの演目で、哀しい男の心情や感情の高ぶりを見事に表現。強い声のテノールではありますが、むしろ弱音の表現力というのでしょうか、声のレンジの幅が格段に豊かなのが印象的。ヴェリズモ…真実とはそういう表現能力なのかもしれません。
それとトニオ役のヴィットリオ・ヴィッテリが存在感ありましたね。開幕の口上とネッダへの欲望の表現、劇中劇での滑稽役、そしてエンディングの「喜劇は終わりました!」…。すべての場面で舞台を引き締めて盛り上げてました。

女声ではサントゥッツァを歌ったルクレシア・ガルシアとネッダのラケーレ・スターニシも良かった。ベネズエラ出身のガルシアは体型まんまるのコロンコロン体型でしたが、なんだか薄幸のサントゥッツァが実に理解できるんですよ。その声の強さと伸びが己の叫びと一体化していてリアルだったなぁ。
一方のネッダ役のスターニシは、イタリア人らしいソプラノで声そのものに艶がある。後半の劇中劇でコロンビーナを演じるのですが、その所作もイタリアの伝統仮面喜劇コンメディア・デッラルテの雰囲気を十分に伝えるもので、そこから結末の惨劇に至るプロセスは歌も演技も素晴らしかったです。

日本人歌手も粒ぞろいでローラの谷口睦美、アルフィオの成田博之、ルチアの森山京子、ペッペの吉田浩之、シルヴィオの与那城敬、いずれもハマっていました。特にシルヴィオの与那城さんは声も演技も艶気があって、この物語のキーパーソンとしての存在感バッチリ。素敵でした。

「道化師」のエンディングはカニオの迫真の演技と歌で大興奮。
「カヴァレリア~」も「道化師」も合唱が本当に素晴らしくて感動しました。
間奏曲や「衣装をつけろ」のアリアがよく知られる作品ですが、やっぱりトータルで味わってこその価値をしみじみ思いました。

拍手~~~!

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2014年5月20日 (火)

巨匠ゼッダの素晴らしき世界

先週末は金曜日に宮崎国際音楽祭の司会、土曜日には、我がオペラ同志のソプラノ天羽明恵さんプロデュース「オペラぺらぺら~愛の妙薬」ナビゲーターを務めて、コンサート・ソムリエとして充実の週末でした。そして極め付きが日曜日に伺ったイタリアのマエストロ、アルベルト・ゼッダが指揮する東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会。
いやいや格別な感動でした…!

東京フィルハーモニー交響楽団 2014年5月18日 Bunkamuraオーチャードホール

 

指揮:アルベルト・ゼッダ
メゾ・ソプラノ:テレーザ・イエルヴォリーノ
コンサート・マスター:青木高志

 

シューベルト:交響曲第3番 ニ長調 D200
ロッシーニ:カンタータ「ジョヴァンナ・ダルコ」

 

マリピエロ:交響曲第2番「悲歌」
ロッシーニ:歌劇「ギヨーム・テル」より 第1幕「パ・ド・シス」 第3幕「兵士の踊り」
ロッシーニ:歌劇「セミラーミデ」序曲

 

ロッシーニ好きにとってアルベルト・ゼッダは神様なのです。
毎夏のロッシーニ・オペラ・フェスティバルの芸術監督であるばかりでなく、ロッシーニの解釈や演奏、そして研究においても最高の存在。普段目にすれば、イタリア人にしては小柄なお爺ちゃんなのですが、ひとたび指揮台に立てば魔法のような音楽をオーケストラで奏でてくれる!その音楽が素晴らしい!!
瑞々しくて、若々しい。洗練されていて奥深い。もう、ホントに素敵なんです。

この日はシューベルトが18歳の時に書いた交響曲から始まりました。
長い序奏から始まるあたりからしてハイドンの晩年のシンフォニーを参考にしているわけですが、生き生きとした楽想や管楽器の歌い方などは、まさにイタリア的…というか、マエストロ・ゼッダが指揮するからこその味わいでした。
なんだかロッシーニの空気なんですよ。実に楽しかったな。ニ長調の調性そのものの愉悦を感じました。

つづいてロッシーニのカンタータ「ジョヴァンナ・ダルコ」。つまりジャンヌ・ダルクです。
1832年の作品ですから彼の「ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)」より後の作品。
カンタータとは言っても、メゾが一人で約18分歌うものです。私には完全にオペラの中のヒロインが歌う大アリアでした。いやぁ、素晴らしかった!
中世の英仏戦争においてフランス救国の少女となったジャンヌ・ダルクが、愛する母親と故郷に別れを告げ、戦いは必ず勝利をもたらすことを誓う場面までが前半。そして戦地に向かい、勝利を収め、その喜びを歌いあげるまでが一大絵巻者アリアのように歌われるのです。最期のパートの超絶技巧のアジリタに感動。歌っていたテレーザはまだ25歳ですが、早くもイタリアではオペラの舞台でも頭角を現していて、ただ者ではない実力を披露してくれました。逸材です。テクニックは完璧。すごい。
「若い頃のバルトリみたいね~」なんて声もあったり、とにかく美しい声のコントロールと表現は素晴らしい。生で聴けて良かった~~~。
オリジナルはピアノ伴奏ですが、ロッシーニ・オペラ・フェスティバルの10周年記念としてサルバトーレ・シャリーノによってオケ版に編曲された作品だそうです。
でも、まるでロッシーニのオペラの一場面かのような響きでした。

ジャンヌ・ダルクが真夜中に故郷と母親に別れを告げて戦地に赴き、その戦いが良い知らせとなることを誓う抒情的なレチタティーボとアリア、母が悲しむ中で実際に戦場へ行き戦いに臨むジャンヌ・ダルクとその勝利を歌いあげる後半は、オーケストラ伴奏あってこその音楽的感動でした。テレーザはすでにオペラ出演もしていて、間違いない逸材なのが分かりました。さすがマエストロが選んだ歌手だ。

休憩をはさんでマリピエロの交響曲第2番。

イタリアの「交響曲」っていうのが珍しい気がしますが、『悲歌』というタイトルを持っていて作品全体に哀愁に満ちた風景画のような趣。これがマエストロの手にかかると一篇の詩のように印象深く響いてくるのです。

そして「ギヨーム・テル」のバレエ音楽と「セミラーミデ序曲」。
「ギヨーム・テル」からは第1幕の「パ・ド・シス」と第3幕「兵士の踊り」が演奏されました。
「ロッシーニの神様」であるマエストロの音楽は、あくまで洗練されていて美しい。大きなオーケストラの一人一人の音色が生き生きとソロやアンサンブルになって一つの音楽になっている。マエストロのロッシーニ愛と楽団員のゼッダ愛が融合した稀有な音楽でした。
単なる若々しさだけでなくて、深い知性と現代人を刺激する感覚に満ちている。
もう、本当に贅沢な時間。

終演後に楽屋に行くと、出会う楽団員が皆、ニコニコと幸せそうな表情なのです。
こんな情景はめったにありません。「生きてる~!って感じです」とか「最高。もう終わってしまうのが残念」なんて声がそこかしこから聴こえてくる。おまけにマエストロと記念写真を撮る楽団員がたくさん…。
アルベルト・ゼッダがいかにオーケストラから愛されているのかを実感しました。だから、あれほどの演奏になったのですね。
とにかくマエストロ・ゼッダの魔術的な魅力は、ロッシーニの音楽の魔術的快感と一緒になって、最高度の幸せを与えてくれました。

来年は「ファルスタッフ」や「ランスへの旅」の指揮で来日する予定だそうです。
世界遺産と言ってもよいゼッダさんの素晴らしい指揮をぜひまた生で聴きたい!
その音楽を聴くと自分の身体と心にもみずみずしさが蘇るのです。
心からそう思います。

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2014年5月13日 (火)

ライブビューイングのはしご

今日は1日でオペラを2本観ました。
パリ・オペラ座とNY,メトロポリタン歌劇場のライブビューイングをはしご。それぞれに特徴あって、あっという間に観終わってしまった。面白かったですよ。

まずは午前10時開始のパリ・オペラ座ライブビューイング。会場は東京メトロ銀座線・三越前駅下車のTOHOシネマズ日本橋。大好きなベルカントもの、それも「清教徒」です!

パリ・オペラ座ライブビューイング 2013年12月9日上演 バスチーユ・オペラ座

 

ベッリーニ「清教徒」

 

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ローラン・ペリ

 

エルヴィーラ:マリア・アグレスタ
アルトゥーロ:ドミトリ・コルチャク
リッカルド:マリウス・クヴィエチェン
ジョルジョ:ミケーレ・ペルトゥージ

 

パリ・オペラ座管弦楽団・合唱団

アグレスタのバスチーユ初登場のオペラです。期待を裏切らない出来でした。いや、まことに素晴らしい!これまで何度か観た舞台は、フローレスはじめ、いずれもアルトゥーロ役のテノールに注目と期待が集まる上演でした。でも今回は間違いなくアグレスタの存在感と表現が目玉です。
ローラ・・ペリの演出は、この物語をエルヴィーラの「夢の中の物語」としてとらえていて、17世紀の城の輪郭だけをとりかごのように構築したセットを使用した舞台。彼女の寝室があって、そこにエルヴィーラは最初からいるので、歌う場面でなくてもほとんど出ずっぱり。階段登ったり、ほかの地点に移動したりと動きもたくさんある中で歌そのものは圧巻でした。狂乱オペラのツボである揺れ動く感情のヒダを、音程も表現も全く不安なく歌いきる様子には驚嘆!しかも最高音やアジリタで「目いっぱいの必死さ」を感じさせない。
ここです。ここが凄い。
素晴らしい歌唱で人を納得させるのは、あくまでキチンとコントロールされている声と表現あってのことでしょう。これが出来るアーティストは素敵です。声でいえば絶叫でなくて、あくまで余裕ある表現かどうかじゃないでしょうか。
アグレスタはそれが出来る歌手です。
アルトゥーロ役のコルチャクも難役を良く歌っていましたが、あの役はねじ伏せるような技量がないと喝采はもらえないのでしょうね。なんとも残酷な役であり、本当のスーパースターだけが歌って評価される役なのが良く分かりました。

脇を固めるクヴィエチェンやペルトゥージも素晴らしい。
この2人が歌うバスとバリトンの二重唱「ラッパを鳴らして」を聴いたらゾクゾクしましたよ。
男同士の熱さと艶、血沸き肉躍る中にロマンの香り高き最高の声の饗宴。
良かったぁ~~~。

指揮のマリオッティも、歌わせ方が最高でした。速いテンポの曲でも、歌う部分はたっぷり余裕を持たせて歌手にもオケにも表現させる。これが抜群に自然で上手。
オケ全体が歌なのですよ。そこに実際の歌手や合唱が一緒になった時の贅沢さ!もう心地良いことこの上ありません。
その音楽の説得力は抜群で、なんとも幸せになったのでした。

さて、この上映が終わったのが13時15分過ぎ。
それから近所の立ち食いそばで昼食を済ませ、向かったのがMETライブビューイングを上映する東銀座の東劇です。
ここではおなじみのラ・ボエームを鑑賞。これがまた良かった!

METライブビューイング 2014年4月5日上演

 

プッチーニ「ラ・ボエーム」

 

指揮:ステファーノ・ランザーニ
演出:フランコ・ゼフィレッリ

 

ミミ:クリスティーヌ・オポライス(アニータ・ハーティングが急な降板のため代役)
ロドルフォ:ヴィットーリオー・グリゴーロ
ムゼッタ:スザンナ・フィリップス
マルチェッロ:マッシモ・カヴァレッティ
ショナール:パトリック・カルフィッツィ
コッリーネ:オレン・グラドゥス

 

メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団・エキストラ

「難しいことをサラリとやってみせる」と言う意味では、この上演日のミミを歌ったオポライスもプロの鑑です。
本来歌うはずのハーティングが上演当日の朝7時半にMETに「風邪で歌えない」とメール連絡。すぐさま代役探しが始まり、朝8時前にオポライスに打診が来たそうです。なんと彼女は前夜METで蝶々夫人のタイトルロールを歌ったばかり。おまけにこの日の開演は午後2時です!普通なら断って当然のオファーでしょ?

ところがオポライスは受けたんですよ。「プロなら受けるべきだ」と考えて…。
その意気や良しですが、彼女の凄いのは本番の舞台でも不自然さなど全く感じさせない歌と演技だったのです。これが感動的!インタビュアーのJ・ディドナートが「あなたはこの18時間に舞台の上で2度死ぬのね!」と言ってましたが、死ぬだけじゃなくてそれぞれのヒロインを歌い切り、演じきるわけですものね。いやいやビックリ!
よほどミミの役を演じているのか、はたまたミミ役が大好きで研究していたのかは分かりませんが、とにかく舞台上の動きも所作も不自然なところは全くなし。それどころかまるで本来のキャスティングのようになじんでいた。一流のプロの凄さでしょう。
「冷たき手」と「私の名はミミ」の場面だってホント上手かったな。
カフェ・モミュスやランフェール門でのロドルフォとのやり取りもしんみりさせたり笑わせたり…。
最後の屋根裏部屋で息を引き取るプロセスも泣きました…。

大したものです。開演前にMETのゲルプ総裁が「これまでのMETの歴史で蝶々夫人の主役をやった翌日にミミを歌った歌手はいません。今日は歴史的な公演です」と言ってましたし、ライブビューイング恒例の幕間インタビューにも快よく応じているのを見ると、一流のアーティストの懐の深さと柔軟性をしみじみ感じました。
難しいことをサラリとやってのけてこそプロ中のプロ…そんな言葉を昔聴いた覚えがありますけれど、オポライスのこの舞台からは、その事実をまざまざと感じました。またまた勉強になったなぁ…。

ゼフィレッリのこの演出は1981年以来のMETの定番演出です。
「ラ・ボエーム」って、どんなオペラ?と聞かれたら必ず紹介したいものですよね。
この上演ではロドルフォはじめ屋根裏の共同生活をする若き4人の芸術家の雰囲気が抜群に良くて、本当の仲間と信じ込めるほどの親しみと一体感を実によく醸し出していました。だからこそ泣けたんでしょう。

1日で6時間も座ってオペラ鑑賞の日でしたが、あまりに素晴らしい歌手たちの舞台に酔えて幸せでした。
映画ならではの興奮と感激。

こういうアクシデントも含めて観客にエンタテインメントとして納得させるのがMETならではのやり方かも。最近いろんな劇場のライブビューイングを楽しめて嬉しいのですが、METのしたたかな面白さはやっぱり特筆モノですね。

実に印象に残る舞台でした。

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2014年5月 6日 (火)

連休に観た映画 2014

この連休はいかがお過ごしでしたか?
毎年ゴールデンウィークは遠くに出掛けるより近いところで過ごすのが好きです。
今年も映画に出かけました。

この時期の私の定番と言えば、有楽町で開催される「イタリア映画祭」。
現代イタリアの最新作がまとめて鑑賞できるのが素敵。イタリア大好きな私にとってははずせないイベントです。
私、映画は基本的に共感できる相手と一緒に観るか、さもなくば一人で観に行く主義です。中途半端な人と映画に行くとえらく興ざめになりますからね。今年はぜ~んぶ一人で行きました。

今年は3作を鑑賞。
まずは「グレート・ビューティ/追憶のローマ」。2013年のパオロ・ロレンティーノ監督作品。
ローマ在住の熟年作家ジェッブが究極の美と愛の対象を求めて行動したり回想する物語。ローマの美しき名所がたくさん出てきます。これまでの愛の遍歴の空しさやはかなさも思い出しながら、なお満たされない美への探究…。142分の大作ですが、その内容の濃さは特別です。冒頭の20分くらいは「よく分からん!」と言う印象でしたが、その後どんどん引き込まれました。亡くなった渡辺淳一さんのような主人公なのかもしれません。
愛と美を求める日々が良く分かる。
監督のソレンティーノは本作でゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、アカデミー賞外国語映画賞を受賞。
この秋、Bunkamuraル・シネマほかで全国上映されるそうです。

つづいてイタリア映画祭で観たのが2013年度制作の「サルヴォ」。
F・グラッサドニアとA・ピアッツァの共同監督。この2人は脚本家として活動している人達。
シチリアが舞台の映画です。
マフィアのヒットマンであるサルヴォは冷酷非情な男。裏切り者を殺しに出かけて、彼が不在の家で出会ったのは標的の男の盲目の妹。家に潜んで目的を達成するものの、兄を殺されたショックからか妹の視力が回復してゆく…。一方サルヴォも本来は標的と一緒に殺しているはずの妹の命までは奪わなかったところから心情に微妙な変化が現れる。彼女を密かにかくまっているうちに愛情が芽生える。やがてそれはサルヴォのボスの知るところとなり…。

なかなか面白い映画でした。会話が少なくて終始重苦しい雰囲気の中に物語が進行。それだけに俳優・女優の演技と表情が際立っていました。結末はちょいと読める展開でしたがね。

そして3作目は「自由に乾杯」と言う作品。イタリア語の原題はViva la libertaですから『自由万歳』っていう感じでしょうか。
これはめっぽう面白かった!ロベルト・アンドー監督の2013年度作品。
舞台は現代のイタリア。最大野党のリーダーであるオリヴィエーリは支持率低迷に困惑し、迫りくる選挙が不安になり失踪してしまう。急な出来事に困惑した腹心の部下とオリヴィエーリの妻が決断したのは、彼の双子の兄弟のジョヴァンニを替玉にすることだった。
ジョヴァンニは精神病院歴のある男。狂気と正気は紙一重。彼の切れ味良く、さわやかで人を魅了する弁舌で世論の評価は一変。腹心の部下や妻はもちろん、首相や大統領までもが目を見張る存在になる。
一方、失踪したオリヴィエーリはパリでフランス人の昔の恋人の下に身を寄せていた。彼女は映画監督の夫と小学生の娘と幸せに暮らしている映画関係者。家族も実に協力的で、妻の昔の恋人と分かっていて同居を許す夫や、次第に打ち解ける彼女の娘。そして彼女自身もオリヴィエーリを温かく迎えてくれる。映画現場でわかい女性スタッフとのアバンチュールまでも経験してしまうオリヴィエーリ。そんな経験を通じて次第に周囲や人に対する感覚を取り戻してゆくオリヴィエーリ。
結末は狂気からか失踪してしまうジョヴァンニと入れ替わる形でオリヴィエーリが自宅に復帰し、自信を取り戻した表情で物語は終わる…。

『グレート・ビューティ/追憶のローマ』で主人公を演じたトニ・セルヴィッロが本作でも双子の兄弟を一人二役で演じています。これがまた秀逸!
それぞれの性格や状況の違いを抜群の演技力で演じ分けている。大笑いするやら、しんみりするやら、感動するポイントが随所にあって実にすばらしい。
ジョヴァンニが気分が高まるとヴェルディ「運命の力」序曲を鼻歌で歌うシーンが随所に出てきます。この曲がキーワードのように物語のツボで聴こえてくるのも良かった。劇的な短調から光が差し込むかのような長調に転じる部分も上手くカット変わりに合わせるという、心憎い使い方もあって誠に印象的に音楽が使われていました。
腹心の部下役は昨年のイタリア映画祭の目玉だった「フォンター広場」で好演したヴァレリオ・マスタンドレア。この俳優も、真面目に演じて笑いをとれる役者ですね。感心しました。

映画の結末で、自信を取り戻して帰宅したオリヴィエーリが見せる微笑みの表情にしびれました。派手なアクションや激烈なセリフでなくて、微笑み一つで全てを納得させてくれる芸にブラ~~~ヴォ!!!
もう1回観たいです。

イタリア映画祭とは別に「テルマエ・ロマエⅡ」も観ました。
続編ということもあってか、僕自身の評価は前作を越える面白さとは言えないかも。
日本の風呂・温泉文化をエンタテインメントとして楽しむのは相変わらず素晴らしいです。
曙や琴欧州が古代ローマ帝国の剣闘士になったり、松島トモ子が熊と絡んだり、往年の喜劇俳優白木みのるが甲高い声でラーメン屋のおやじで登場するのは笑いましたけど、物語の設定やパターンを知って観る「続編」だけに、新鮮な驚きが少なかったのも事実。初作の面白さが画期的だっただけに、同じパターンで前作を越えるのがいかに難しいかを感じましたよ。決してつまらない作品ではありませんけどね…。

でも、やっぱり映画は面白いな。
オペラと同じ総合芸術ですからね。この映画はフジテレビの作品です。最近テレビでは勢いが弱くなったフジテレビではありますが、洗練されたバカバカしさというのでしょうか、飽きさせないエッセンスは生きてます。

ちなみにテルマエ・ロマエⅡにも相変わらずヴェルディやプッチーニのオペラから色々な曲が使われています。その音楽が、日本人の演じる「ローマ帝国の物語」になんとも言えぬ説得力を加えています。
相撲協会も協力しての大作です。

元横綱・曙のカッコイイ姿、久しぶりに見ました。

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