« 巨匠ゼッダの素晴らしき世界 | トップページ | METライブビューイング「コジ・ファン・トゥッテ」 »

2014年5月25日 (日)

新国立劇場「カヴァレリア~」&「道化師」

 

久しぶりに新国立劇場へ出かけました。指揮者・オケ・演出・歌手。この4つがそろって完成する感激を味わいました。

新国立劇場公演
マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」&レオンカヴァッロ「道化師」

 

指揮:レナート・パルンボ
演出:ジルベール・デフロ

 

新国立劇場合唱団 TOKYO FM少年合唱団
東京フィルハーモニー交響楽団

 

<カヴァレリア・ルスティカーナ>
サントゥッツァ:ルクレシア・ガルシア
ローラ:谷口睦美
トゥリドゥ:ヴァルテル・フラッカーロ
アルフィオ:成田博之
ルチア:森山京子

 

<道化師>
カニオ:グスターヴォ・ポルタ
ネッダ:ラケーレ・スターニシ
トニオ:ヴィットリオ・ヴィテッリ
ペッペ:吉田浩之
シルヴィオ:与那城敬

いわゆるヴェリズモ(真実主義)・オペラの代表作。社会人を生徒としたオペラ講座でこの公演を採りあげて、実際に観に行くこともあって、事前に舞台を見に行きました。
フランドル出身のデフロが新国立劇場に初登場で新演出というのも興味のわくところでした。

まずは「カヴァレリア・ルスティカーナ」。幕が開くと、そこはシチリアの村の古代ローマ円形劇場の遺跡です。丘に囲まれているのでしょう。市も手には大きなオリーブの老木が1本生えていてルチアの営む居酒屋の入り口になっている。
このオペラは復活祭の日が舞台なので、磔刑の十字架やキリスト像、マリア像が村人によって担がれてる場面も登場し、なかなか見ごたえがありました。ただし建物や教会はありません。デフロは古代アレーナを舞台にすることで「観客を舞台上に映す鏡」と意図したと語っています。古代ローマ時代にはアレーナで人間同士の剣による闘技、あるいは人間対動物の闘技(どちらにしろ命が生贄として捧げられるイベントでしょうね)が行われていて、デフロによればこのオペラのアレーナでの生贄的存在がトゥリッドゥであり、ネッダというわけです。

ほんとうに古代アレーナで芝居を見ている気分になる演出でした。「道化師」では冒頭に旅回りの一座が客席から芝居のビラまきしながら登場する仕掛けもあって、そのあたりの雰囲気作りは面白かったです。

デフロは最近流行の「読み替え」演出とは一線を画す演出家です。
「ヴェリズモのオペラは特に演劇と音楽の融合が重要です。ベルカント・オペラのように静止した舞台で歌の芸術を聴く、というタイプの作品とは演出方法も違います。演技は音楽的で、音楽は演劇的でなくてはならない。そこに演劇上の一致が生まれる。それが≪芸術≫です。(中略) 演出家は作品が作られた状況をふまえ、解決案を編み出さなければならない。現代に物語を移すのも殆どの場合は無理がある。だから演出の仕事というのは複雑なのです。作品が上演されるのは現代です。しかしこれらの作品が書かれたのは今ではないのです。私は現代のテクノロジーは利用するべきだと思っています。だが物語を破壊するのはいけない。真の作者は作曲家なのです。
私たちは再現芸術をする立場です。音楽を殺してはいけません」
(公演プログラムより)

単なる懐古趣味ではなく、作品に対する深い洞察と背景の分析を身上とするタイプですね。

指揮のパルンボはヴェリズモ・オペラの傑作を、まさに演劇的音楽に仕上げていました。
舞台上の歌手の動きとオーケストラの音楽が、動的にも感情的にもピッタリ重なって展開してゆきます。もちろん感情的に高ぶる部分や聴かせどころの盛り上げもツボを心得ていて、しかもそれが本当に自然な形なので気持ち良い。オケに感動というというよりオペラ全体に心から感激できる音楽でした。

歌手ではトゥリッドゥのフラッカーロとカニオのポルタの両テノールが聴かせてくれました。
嫉妬と復讐がテーマの演目で、哀しい男の心情や感情の高ぶりを見事に表現。強い声のテノールではありますが、むしろ弱音の表現力というのでしょうか、声のレンジの幅が格段に豊かなのが印象的。ヴェリズモ…真実とはそういう表現能力なのかもしれません。
それとトニオ役のヴィットリオ・ヴィッテリが存在感ありましたね。開幕の口上とネッダへの欲望の表現、劇中劇での滑稽役、そしてエンディングの「喜劇は終わりました!」…。すべての場面で舞台を引き締めて盛り上げてました。

女声ではサントゥッツァを歌ったルクレシア・ガルシアとネッダのラケーレ・スターニシも良かった。ベネズエラ出身のガルシアは体型まんまるのコロンコロン体型でしたが、なんだか薄幸のサントゥッツァが実に理解できるんですよ。その声の強さと伸びが己の叫びと一体化していてリアルだったなぁ。
一方のネッダ役のスターニシは、イタリア人らしいソプラノで声そのものに艶がある。後半の劇中劇でコロンビーナを演じるのですが、その所作もイタリアの伝統仮面喜劇コンメディア・デッラルテの雰囲気を十分に伝えるもので、そこから結末の惨劇に至るプロセスは歌も演技も素晴らしかったです。

日本人歌手も粒ぞろいでローラの谷口睦美、アルフィオの成田博之、ルチアの森山京子、ペッペの吉田浩之、シルヴィオの与那城敬、いずれもハマっていました。特にシルヴィオの与那城さんは声も演技も艶気があって、この物語のキーパーソンとしての存在感バッチリ。素敵でした。

「道化師」のエンディングはカニオの迫真の演技と歌で大興奮。
「カヴァレリア~」も「道化師」も合唱が本当に素晴らしくて感動しました。
間奏曲や「衣装をつけろ」のアリアがよく知られる作品ですが、やっぱりトータルで味わってこその価値をしみじみ思いました。

拍手~~~!


« 巨匠ゼッダの素晴らしき世界 | トップページ | METライブビューイング「コジ・ファン・トゥッテ」 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/546588/59703140

この記事へのトラックバック一覧です: 新国立劇場「カヴァレリア~」&「道化師」:

« 巨匠ゼッダの素晴らしき世界 | トップページ | METライブビューイング「コジ・ファン・トゥッテ」 »