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2014年5月20日 (火)

巨匠ゼッダの素晴らしき世界

先週末は金曜日に宮崎国際音楽祭の司会、土曜日には、我がオペラ同志のソプラノ天羽明恵さんプロデュース「オペラぺらぺら~愛の妙薬」ナビゲーターを務めて、コンサート・ソムリエとして充実の週末でした。そして極め付きが日曜日に伺ったイタリアのマエストロ、アルベルト・ゼッダが指揮する東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会。
いやいや格別な感動でした…!

東京フィルハーモニー交響楽団 2014年5月18日 Bunkamuraオーチャードホール

 

指揮:アルベルト・ゼッダ
メゾ・ソプラノ:テレーザ・イエルヴォリーノ
コンサート・マスター:青木高志

 

シューベルト:交響曲第3番 ニ長調 D200
ロッシーニ:カンタータ「ジョヴァンナ・ダルコ」

 

マリピエロ:交響曲第2番「悲歌」
ロッシーニ:歌劇「ギヨーム・テル」より 第1幕「パ・ド・シス」 第3幕「兵士の踊り」
ロッシーニ:歌劇「セミラーミデ」序曲

 

ロッシーニ好きにとってアルベルト・ゼッダは神様なのです。
毎夏のロッシーニ・オペラ・フェスティバルの芸術監督であるばかりでなく、ロッシーニの解釈や演奏、そして研究においても最高の存在。普段目にすれば、イタリア人にしては小柄なお爺ちゃんなのですが、ひとたび指揮台に立てば魔法のような音楽をオーケストラで奏でてくれる!その音楽が素晴らしい!!
瑞々しくて、若々しい。洗練されていて奥深い。もう、ホントに素敵なんです。

この日はシューベルトが18歳の時に書いた交響曲から始まりました。
長い序奏から始まるあたりからしてハイドンの晩年のシンフォニーを参考にしているわけですが、生き生きとした楽想や管楽器の歌い方などは、まさにイタリア的…というか、マエストロ・ゼッダが指揮するからこその味わいでした。
なんだかロッシーニの空気なんですよ。実に楽しかったな。ニ長調の調性そのものの愉悦を感じました。

つづいてロッシーニのカンタータ「ジョヴァンナ・ダルコ」。つまりジャンヌ・ダルクです。
1832年の作品ですから彼の「ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)」より後の作品。
カンタータとは言っても、メゾが一人で約18分歌うものです。私には完全にオペラの中のヒロインが歌う大アリアでした。いやぁ、素晴らしかった!
中世の英仏戦争においてフランス救国の少女となったジャンヌ・ダルクが、愛する母親と故郷に別れを告げ、戦いは必ず勝利をもたらすことを誓う場面までが前半。そして戦地に向かい、勝利を収め、その喜びを歌いあげるまでが一大絵巻者アリアのように歌われるのです。最期のパートの超絶技巧のアジリタに感動。歌っていたテレーザはまだ25歳ですが、早くもイタリアではオペラの舞台でも頭角を現していて、ただ者ではない実力を披露してくれました。逸材です。テクニックは完璧。すごい。
「若い頃のバルトリみたいね~」なんて声もあったり、とにかく美しい声のコントロールと表現は素晴らしい。生で聴けて良かった~~~。
オリジナルはピアノ伴奏ですが、ロッシーニ・オペラ・フェスティバルの10周年記念としてサルバトーレ・シャリーノによってオケ版に編曲された作品だそうです。
でも、まるでロッシーニのオペラの一場面かのような響きでした。

ジャンヌ・ダルクが真夜中に故郷と母親に別れを告げて戦地に赴き、その戦いが良い知らせとなることを誓う抒情的なレチタティーボとアリア、母が悲しむ中で実際に戦場へ行き戦いに臨むジャンヌ・ダルクとその勝利を歌いあげる後半は、オーケストラ伴奏あってこその音楽的感動でした。テレーザはすでにオペラ出演もしていて、間違いない逸材なのが分かりました。さすがマエストロが選んだ歌手だ。

休憩をはさんでマリピエロの交響曲第2番。

イタリアの「交響曲」っていうのが珍しい気がしますが、『悲歌』というタイトルを持っていて作品全体に哀愁に満ちた風景画のような趣。これがマエストロの手にかかると一篇の詩のように印象深く響いてくるのです。

そして「ギヨーム・テル」のバレエ音楽と「セミラーミデ序曲」。
「ギヨーム・テル」からは第1幕の「パ・ド・シス」と第3幕「兵士の踊り」が演奏されました。
「ロッシーニの神様」であるマエストロの音楽は、あくまで洗練されていて美しい。大きなオーケストラの一人一人の音色が生き生きとソロやアンサンブルになって一つの音楽になっている。マエストロのロッシーニ愛と楽団員のゼッダ愛が融合した稀有な音楽でした。
単なる若々しさだけでなくて、深い知性と現代人を刺激する感覚に満ちている。
もう、本当に贅沢な時間。

終演後に楽屋に行くと、出会う楽団員が皆、ニコニコと幸せそうな表情なのです。
こんな情景はめったにありません。「生きてる~!って感じです」とか「最高。もう終わってしまうのが残念」なんて声がそこかしこから聴こえてくる。おまけにマエストロと記念写真を撮る楽団員がたくさん…。
アルベルト・ゼッダがいかにオーケストラから愛されているのかを実感しました。だから、あれほどの演奏になったのですね。
とにかくマエストロ・ゼッダの魔術的な魅力は、ロッシーニの音楽の魔術的快感と一緒になって、最高度の幸せを与えてくれました。

来年は「ファルスタッフ」や「ランスへの旅」の指揮で来日する予定だそうです。
世界遺産と言ってもよいゼッダさんの素晴らしい指揮をぜひまた生で聴きたい!
その音楽を聴くと自分の身体と心にもみずみずしさが蘇るのです。
心からそう思います。


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