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2014年5月13日 (火)

ライブビューイングのはしご

今日は1日でオペラを2本観ました。
パリ・オペラ座とNY,メトロポリタン歌劇場のライブビューイングをはしご。それぞれに特徴あって、あっという間に観終わってしまった。面白かったですよ。

まずは午前10時開始のパリ・オペラ座ライブビューイング。会場は東京メトロ銀座線・三越前駅下車のTOHOシネマズ日本橋。大好きなベルカントもの、それも「清教徒」です!

パリ・オペラ座ライブビューイング 2013年12月9日上演 バスチーユ・オペラ座

 

ベッリーニ「清教徒」

 

指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ローラン・ペリ

 

エルヴィーラ:マリア・アグレスタ
アルトゥーロ:ドミトリ・コルチャク
リッカルド:マリウス・クヴィエチェン
ジョルジョ:ミケーレ・ペルトゥージ

 

パリ・オペラ座管弦楽団・合唱団

アグレスタのバスチーユ初登場のオペラです。期待を裏切らない出来でした。いや、まことに素晴らしい!これまで何度か観た舞台は、フローレスはじめ、いずれもアルトゥーロ役のテノールに注目と期待が集まる上演でした。でも今回は間違いなくアグレスタの存在感と表現が目玉です。
ローラ・・ペリの演出は、この物語をエルヴィーラの「夢の中の物語」としてとらえていて、17世紀の城の輪郭だけをとりかごのように構築したセットを使用した舞台。彼女の寝室があって、そこにエルヴィーラは最初からいるので、歌う場面でなくてもほとんど出ずっぱり。階段登ったり、ほかの地点に移動したりと動きもたくさんある中で歌そのものは圧巻でした。狂乱オペラのツボである揺れ動く感情のヒダを、音程も表現も全く不安なく歌いきる様子には驚嘆!しかも最高音やアジリタで「目いっぱいの必死さ」を感じさせない。
ここです。ここが凄い。
素晴らしい歌唱で人を納得させるのは、あくまでキチンとコントロールされている声と表現あってのことでしょう。これが出来るアーティストは素敵です。声でいえば絶叫でなくて、あくまで余裕ある表現かどうかじゃないでしょうか。
アグレスタはそれが出来る歌手です。
アルトゥーロ役のコルチャクも難役を良く歌っていましたが、あの役はねじ伏せるような技量がないと喝采はもらえないのでしょうね。なんとも残酷な役であり、本当のスーパースターだけが歌って評価される役なのが良く分かりました。

脇を固めるクヴィエチェンやペルトゥージも素晴らしい。
この2人が歌うバスとバリトンの二重唱「ラッパを鳴らして」を聴いたらゾクゾクしましたよ。
男同士の熱さと艶、血沸き肉躍る中にロマンの香り高き最高の声の饗宴。
良かったぁ~~~。

指揮のマリオッティも、歌わせ方が最高でした。速いテンポの曲でも、歌う部分はたっぷり余裕を持たせて歌手にもオケにも表現させる。これが抜群に自然で上手。
オケ全体が歌なのですよ。そこに実際の歌手や合唱が一緒になった時の贅沢さ!もう心地良いことこの上ありません。
その音楽の説得力は抜群で、なんとも幸せになったのでした。

さて、この上映が終わったのが13時15分過ぎ。
それから近所の立ち食いそばで昼食を済ませ、向かったのがMETライブビューイングを上映する東銀座の東劇です。
ここではおなじみのラ・ボエームを鑑賞。これがまた良かった!

METライブビューイング 2014年4月5日上演

 

プッチーニ「ラ・ボエーム」

 

指揮:ステファーノ・ランザーニ
演出:フランコ・ゼフィレッリ

 

ミミ:クリスティーヌ・オポライス(アニータ・ハーティングが急な降板のため代役)
ロドルフォ:ヴィットーリオー・グリゴーロ
ムゼッタ:スザンナ・フィリップス
マルチェッロ:マッシモ・カヴァレッティ
ショナール:パトリック・カルフィッツィ
コッリーネ:オレン・グラドゥス

 

メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団・エキストラ

「難しいことをサラリとやってみせる」と言う意味では、この上演日のミミを歌ったオポライスもプロの鑑です。
本来歌うはずのハーティングが上演当日の朝7時半にMETに「風邪で歌えない」とメール連絡。すぐさま代役探しが始まり、朝8時前にオポライスに打診が来たそうです。なんと彼女は前夜METで蝶々夫人のタイトルロールを歌ったばかり。おまけにこの日の開演は午後2時です!普通なら断って当然のオファーでしょ?

ところがオポライスは受けたんですよ。「プロなら受けるべきだ」と考えて…。
その意気や良しですが、彼女の凄いのは本番の舞台でも不自然さなど全く感じさせない歌と演技だったのです。これが感動的!インタビュアーのJ・ディドナートが「あなたはこの18時間に舞台の上で2度死ぬのね!」と言ってましたが、死ぬだけじゃなくてそれぞれのヒロインを歌い切り、演じきるわけですものね。いやいやビックリ!
よほどミミの役を演じているのか、はたまたミミ役が大好きで研究していたのかは分かりませんが、とにかく舞台上の動きも所作も不自然なところは全くなし。それどころかまるで本来のキャスティングのようになじんでいた。一流のプロの凄さでしょう。
「冷たき手」と「私の名はミミ」の場面だってホント上手かったな。
カフェ・モミュスやランフェール門でのロドルフォとのやり取りもしんみりさせたり笑わせたり…。
最後の屋根裏部屋で息を引き取るプロセスも泣きました…。

大したものです。開演前にMETのゲルプ総裁が「これまでのMETの歴史で蝶々夫人の主役をやった翌日にミミを歌った歌手はいません。今日は歴史的な公演です」と言ってましたし、ライブビューイング恒例の幕間インタビューにも快よく応じているのを見ると、一流のアーティストの懐の深さと柔軟性をしみじみ感じました。
難しいことをサラリとやってのけてこそプロ中のプロ…そんな言葉を昔聴いた覚えがありますけれど、オポライスのこの舞台からは、その事実をまざまざと感じました。またまた勉強になったなぁ…。

ゼフィレッリのこの演出は1981年以来のMETの定番演出です。
「ラ・ボエーム」って、どんなオペラ?と聞かれたら必ず紹介したいものですよね。
この上演ではロドルフォはじめ屋根裏の共同生活をする若き4人の芸術家の雰囲気が抜群に良くて、本当の仲間と信じ込めるほどの親しみと一体感を実によく醸し出していました。だからこそ泣けたんでしょう。

1日で6時間も座ってオペラ鑑賞の日でしたが、あまりに素晴らしい歌手たちの舞台に酔えて幸せでした。
映画ならではの興奮と感激。

こういうアクシデントも含めて観客にエンタテインメントとして納得させるのがMETならではのやり方かも。最近いろんな劇場のライブビューイングを楽しめて嬉しいのですが、METのしたたかな面白さはやっぱり特筆モノですね。

実に印象に残る舞台でした。


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