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2014年6月13日 (金)

バルトリの「チェネレントラ」~ザルツブルク聖霊降臨音楽祭~

 先週末からザルツブルクに行ってきました。「聖霊降臨音楽祭」が行われていて、音楽監督は、あの驚異のソプラノであるチェチーリア・バルトリ。今年のテーマは「ロッシーニッシモ!」でしてロッシーニ大特集。これは是が非でも行かなくちゃ!というわけで6月7日から9日まで滞在してオペラとコンサート6公演を鑑賞。
めくるめくロッシーニの音楽に酔いました。

フランクフルト経由でザルツブルクに到着したのが6月6日の夜遅く。現地は連日最高気温33度くらいの暑さです。湿気はないものの日射しは強烈。ホテルで自転車を借りて散歩や移動にフル回転。歩くよりははるかにラクでした。

7日は19時から祝祭劇場にある「モーツァルトの家」ホールで「チェネレントラ」へ。
開演30分前に会場に到着すると、周辺は着飾った紳士淑女がシャンパングラス片手に談笑しております。ザルツブルクの音楽祭はいつもセレブがいっぱいですね。貴族的な華やかさが漂います。

2014年6月7日  ロッシーニ「チェネレントラ」 19時開演

指揮:ジャン・クリストフ・スピノジ
演出:ダミアーノ・ミキエレット

アンジェリーナ(チェネレントラ):チェチーリア・バルトリ
ドン・ラミーロ(王子):ジャビエル・カマレナ
ダンディーニ(王子の従者):ニコラ・アライモ
アリドーロ(王子の家庭教師):ウーゴ・ウアリアルド
ドン・マニフィコ(シンデレラの継父):エンツォ・カプアノ

ウィーン国立歌劇場合唱団、 アンサンブル・マテウス(古楽器オケ)

バルトリが歌うチェネレントラを一度生で聴いてみたいと思っていただけに、期待して出かけました。王子役はチューリヒ歌劇場で多くのコンビを組んでいるテノールのジャビエル・カマレナ。最近その輝かしい高音域でベルカント物を得意とし、ヨーロッパ全域で人気が高まっている注目株です。しかも演出のミキエレットは、だいたいオリジナルをひとひねりした舞台を演出する人。おまけにロッシーニのオペラ上演では珍しい古楽器によるオーケストラです。

スピノジの指揮は少々作り込みすぎるきらいがあって、序曲では途中で急にテンポが変化したり舞台の歌手たちの動きとオケをいっしょにしようとして流れが止まってしまうような箇所もありました。あとは古楽器オケゆえにダイナミックスがどうしても足りなく感じてしまう。
これがもう少し小規模な劇場なら良しとしますが、いかんせん迫力不足に感じてしまうのは今迄古楽器オケのロッシーニなど生で聴いたことがなかったせいでしょうか…。

バルトリとカマレナはさすがの歌唱でした。
ミキエレットの演出は、シンデレラの家は現代の街のバールになっていて、そこのオーナーがドン・マニフィコ。義姉2人は父が居眠りしているすきにレジから現金をくすねるような馬鹿娘として描かれていて、アンジェリーナはそのカフェでゴム手袋にモップ片手にこき使われているという設定。
アリドーロは最初から天使のような役回りで、天上からカバンと共に地上に降り立ち、シンデレラにあれこれと幸運をもたらしたり手助けしながら状況を見守っています。
ディズニー映画での「シンデレラ」における魔法使いのお婆さん的な描かれ方でした。
王子の花嫁募集がカフェのテレビにニュースとして流れて、ダンディーニと王子が身分を入れ替えてカフェにやって来て物語が進む…というわけです。

最後のアンジェリーナの大アリア「哀しみと涙のうちに生まれて」のところでアンジェリーナが居合わせた皆に結婚の引き出物のようなプレゼントを渡すのですが、アリアを歌い始めるとそこから掃除用のゴム手袋がでてきて、天上から掃除用のバケツがたくさんぶら下がってくる。王子が洗剤をまきながらドン・マニフィコや義姉たちが、以前アンジェリーナがやっていたように掃除を始める…というなりゆきに客席は大ウケ。「私の復讐は赦すことなのです」なんて歌いながらちゃっかり復讐を遂げる現代娘のアンジェリーナなのでした。

それにしてもバルトリの歌唱にあらためて驚愕。
超絶技巧の装飾音がひとつひとつ粒のように、しかも美しく音楽となって響いてくる。それをソットヴォーチェでも自由自在に歌いこなすんですから!
舞台から6列目の席で鑑賞しましたが、そのくらい近くで聴くと彼女の息遣いと共に空気が揺れるのを実感できます。素晴らしいアジリタでは細かく飛んでくる響きのシャワーを浴びているような感覚でした。もう本当に「凄い!!」としか言いようがない。
いっぽうカマレナの声は、若いだけにとにかくドカーンと突き刺さるような輝かしさに満ちています。洗練とかスマートさはさておき、今の彼しか出せない声なのは確かです。同じテノールでもシラグーザのような甘さと滑らかさは対極の、強さと勢いで聴く者をねじ伏せる感じかな。これからどういう風に熟していくのかも楽しみです。

「チェンレントラ」は台本も音楽もとても良くできたオペラなので、これまであまり奇抜な演出にはお目にかかりませんでしたが、今回のミキエレットのニュープロダクションにはニヤリとさせられました。
ロッシーニアンとしては大満足の聖霊降臨音楽祭最初のオペラでした。


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