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2014年7月 4日 (金)

3つの鮮烈なる鑑賞① 「コバケンとハンガリー国立フィル」

気がつくと7月。
先月のザルツブルク紀行から帰ってから、なんだかんだと忙しくブログ更新せぬままに時間が経ってしまいました。でも、その間にも印象に残るコンサートやオペラがありましたね。
特にこの1週間に体感した3演目は忘れられぬもの。
忘れないうちに書いておきます。

まずは6月26日にサントリーホールで聴いた「ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団」。指揮は桂冠指揮者の小林研一郎さんです。プログラムは、

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
  〃       :交響曲第6番ロ短調 Op。74 「悲愴」

マエストロ・コバケンは1974年のブダペスト国際指揮者コンクールで優勝して今年が40周年。節目の年とあって3月にブダペストでハンガリー国立フィルと9年ぶりの共演で記念コンサートを開催しました。
約30年の間に500回もの共演を重ねたハンガリー国立フィル。深い絆で結ばれたマエストロとオケはしばらくぶりの演奏でも熱狂の渦となったようですが、今回の日本公演でそれを実感できたのは僕にとって音楽体験の宝物の一つと言って良いでしょう。
オーケストラと指揮者が生み出す音楽空間の何と豊穣で感動的な響き!それはもう、すごいものでした。

最初の「ルスラン~」が始まる時、オケが勢ぞろいしてチューニングを終えると、下手の舞台袖からマエストロが弾けるように躍動感あふれる速足で登場。指揮台に立って大きく間をとってタクトが振り下ろされた瞬間から魔法のような響きがオーケストラからあふれ出します。スピードがあってオケ全体が疾走する感のあるこの曲は、コンサートのオープニングとしてよく演奏される曲ではありますが、マエストロとハンガリー国立オケの演奏は「聴く」のと同時に聴衆の心をとりこんで、我々もいつの間にか音楽と一体になっている感覚。
全体の響きに加えソロ楽器や楽器群の音色の浮かび上がりが実に鮮やかで、作品の生命力、その輝きはひたすら素晴らしい!の一言です。

当日のプログラムに中東生さんの書いた解説が掲載されていましたが、その中でマエストロはこんな風に語っている。
「(当日は)普段あまり聴けない、点と線の音楽を是非体験して頂きたい」それは「心と心が触れ合った『点』が、音楽という一本の『線』の上で長く発展していく演奏」なのだそうです。

その夜の響きはまさにそれ!オケのひとりひとりの心とマエストロの心が点となり、線から太いうねりになり、それが聴衆の心をも巻き込んで大河となる…。チャイコフスキーの「悲愴」は最後までその大河がエネルギーをたたえたまま、しかし静かな感動と共に曲が終わりました。
「特に『悲愴』など、指揮者が聴衆の前で振るにはすごい勇気がいるものなんです。何故なら最後に盛り上がらずに終わる楽想だからです。心臓の鼓動がどんどん弱まっていき、最後に息を吐いたまま吸わずに終わるようなエンディングは、それは大変な試練といえます。でもその分、見事にやり通せた時に重厚さが生まれます。~中略~しかしハンガリー国立フィルとの共演では、その表現力故に、先細りになってしまうはずはないと確信しています」

その言葉通り、ピアニッシモなのに何と重厚で濃厚なエンディングだったことでしょう。
そして神々しいとさえ思える圧倒的なスケール、説得力!
小林研一郎という指揮者とハンガリーの歴史と繋がりだからこそ可能な音楽でした。

聴けて良かった。あの響き、あの音楽……。


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コメント

はじめまして。

昨日、福生の都饗のコンサートに
行った者です。
朝岡さんの軽妙な語り口で
白鳥の湖の全貌?も分かり楽しく
指揮体験の参加者へのフォローも
素晴らしかったです。

炎の指揮者コバケンさんも、
母がいた合唱団の指揮をされてますし
ハンガリーのコンクール直後の
マチューシャ教会の音楽会に母が参加
したことも私にも懐かしい思い出です。

昨日のプログラムを読むと、朝岡さんは
コンサートソムリエとして活動されて
いる旨、益々のご活躍を願っております。
「いくぞ、オペラな街」読んでみます♪

投稿: スミレ | 2014年7月13日 (日) 08時52分

スミレさま

コメントありがとうございました。
ハンガリーご出身ですか?客席にいらっしゃったのを舞台から拝見しておりました。
コバケンさんとは今年も何回か御一緒する予定がございます。
どうぞ、またコンサートにお越しくださいね。

投稿: オペラフリーク | 2014年7月13日 (日) 21時57分

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